専門職後見人に監督人が就く意味とは

先日

【成年後見:着服事件相次ぐ 弁護士にも監督人】

という記事が掲載されていました。

成年後見等事件では、成年後見人等(保佐人、補助人を含みます)には、大きな代理権が付与される(保佐人・補助人は代理権目録の範囲内)ため、親族後見人、第三者後見人を問わず、横領する事件が多く報告されるようになりました。


専門職後見人とは、家庭裁判所から一定の研修等を受講し、倫理規範の習得をしたとして、所属団体より推薦を受けて後見人に就任する後見人をいいます。

岐阜県の司法書士の例でいえば、司法書士有志で構成されている、「公益社団法人 成年後見センター・リーがルサポート」(以下、「LS」といいます。)の岐阜県支部に入会し、一定の研修を受け、家庭裁判所に提出する後見人名簿・監督人名簿に登載される必要があります。この名簿に登載された司法書士のみが、家庭裁判所から後見人等に選任されることになります。

実際は、家裁の調査官が事件概要を把握したうえで、どの専門職が相応しいかを検討し、家裁から専門職団体へ推薦依頼がきます。これに対して、専門職団体が候補者を出すという流れになっています。

 

専門職として家裁から推薦依頼がくるということは、当然、成年後見事件への関与の実績があり、公正な後見事務を遂行できると家裁が判断したからといえます。平たく表現すれば、「家裁からの信用がある」ということです。

しかし、前記のとおり、横領事件が起こっており、非常に後見制度自体への信用問題にもなっています。

専門職であれば、当然に高い倫理観が必要であり、通常より高度な責任も背負うことになります。家裁からの信用、社会からの信用にも当然、応えていく必要があると思います。

 

記事の中に「弁護士が信用されていない」とのコメントがあります。確かに、実際に真面目に後見業務に取り組む者からしたら、最初はそう感じるのかもしれません。しかし、現状、信用されなくなっている結果がこういった東京家裁の取り組みです。愚痴ともとれるコメントの前に、専門職の置かれている状況を把握しなければならないと思います。コメントには慢心が現れているとしか思えません。

ベテランも中堅も新人も、後見制度においては何ら関係ありません。

正確な法律知識、実務知識、経験、意欲、高度な倫理観、こういったものを備えた人間のみが後見制度に関与すべきです。「資格のネームバリュー」のみで関与できると考えるのであれば、それこそ大きな勘違いであり、慢心そのものです。

本来、後見人、家裁が目を向けなければならないのは、本人である被後見人等の利益のはずです。後見人の不正に対して、不要な時間を割くのはあるべき姿ではありません。

 

専門職後見人に監督人をつけるのであれば、同じ資格の専門職ではなく、利害関係のない他の専門職から選任をすることで実効性が出てくるのではないかと考えます。よって、監督人としての実務にも積極的に関与していく姿勢や取り組みも必要になってくると思います。

(記事:毎日新聞 http://mainichi.jp/select/news/20150723k0000m040161000c.html

司法書士 平 野  瞬