子供の貧困と離婚・養育費問題

 6月19日(水)に、『離婚に関する実務と養育費制度』と題した研修に参加をしてきました。「離婚」「養育費」をめぐる案件は、一般に【家事事件】と呼ばれ、家庭裁判所を舞台に手続がなれれることがあります。司法書士がこうした「家事事件」に関与できることはご存知でしょうか?

 司法書士法には次のような条文があります。

 

(業務)
第三条  司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
(中略)
 裁判所・・・に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
 前各号の事務について相談に応ずること。

この4号、5号を根拠に司法書士は離婚や養育費に関する相談を受け、業務をおこなっています。
しかし、今回の講師はこういった案件を多く手がけてきた理由は、この司法書士法の業務をおこなう根拠ではありませんでした。
ある調査によると、『夫婦問題を抱えている、抱えたことがある』と答えた人の割合が23.6%と約4人の1人という結果があるそうです。つまり、市民の悩みやトラブルとして家庭内の問題が存在しているという現実。
また、日常生活における「家庭・金銭・労働」は密接に関連しており、離婚という悩みは、これら全てに大きな影響を及ぼすことになるとのことでした。

さらに近年「子供の貧困」という問題が深刻化していると厚生労働省の調査では、子供の貧困率が16.3%、約6人に1人という結果も出ています。
子供のいる現役世帯のうち大人一人世帯の貧困率は、なんと54.6%と2世帯に1世帯割合でした。
こうしたデータから、「子供の育つ環境を作る必要性」を実感し、本来は大人の問題である離婚や養育費の問題で、子供を貧困にしないために、法律面からサポートしたいという動機が原動力になっているそうです。

「養育費」は親が受け取るものではなく、子供の権利であること。
「面会交流」についても、子供が親と会う権利であること。
つまり、「養育費を払わない人とは面会交流させない!」というのは、通用しないということです。

まずは調停となるわけですが、調停は【本人出頭の原則】があるため、代理人弁護士がついても裁判所には本人が出頭する必要があります。
裁判官や調停委員は代理人弁護士の言葉を待っているのではなく、当事者である本人の本心を聞きたいという思いがあるそうです。
だからこそ、司法書士は面談の際に丁寧に聞き取りをし、本人の本心を汲み取り、本人が現場で自分の口ではうまく表現しきれない部分を、さまざまな提出書類をもってサポートしていくことができる法律職能である。
代理人でない司法書士だかららこそ、できるサポート、支援がある!
改めて司法書士制度の存在意義を考えるきっかけになった研修でした。
夫婦間の問題という視点ではなく、子供の問題として、離婚や養育費の問題に取り組んでいきたいと思います。

司法書士 平 野  瞬