首長申立による成年後見開始の審判

朝日新聞デジタルで下記の記事が掲載されていました。

私も成年後見業務に従事し、平成27年4月現在で、実際に3名の方の成年後見人、2名の方の任意後見監督人に就任しています。

家庭裁判所からリーガルサポートへ後見人等の推薦依頼がきますが、多くは一次的に申立権者である親族による申立案件です。

民法には成年後見開始の審判の申立権者を次のように規定しています。

「・・・家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族・・・の請求により、後見開始の審判をすることができる。」


しかし中には、配偶者や子供、申立てをお願いできる四親等内の親族がいない場合もあり、そういった場合は市町村長による申立てがなされることがあります。

この市町村長による申立ては民法上の制度ではなく、「老人福祉法」、「知的障害者福祉法」、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に根拠があります。

実際に私が最初に就任した成年後見の案件は、市長申立てによる案件でした。

本人(=支援を必要としている成年被後見人)は未婚で、四親等内の親族はいましたが、以前から全く交流がなく、申立てに協力できないとのことで、やむを得ず市長申立ての方法をとったそうです。


どうしても法律の規定により、親族ではない親身になってくれている隣近所の方が申立てを行うことができません。

お近くに支援を必要としている方がお見えになったら、司法書士などの専門家にご相談ください。

ご相談をいただければ、こちらから市町村の担当課へ働きかけをして、後見制度の利用が可能になる場合もあります。


当事務所では成年後見制度、任意後見制度のご相談を承っています。お気軽にお声掛けください。


司法書士 平 野  瞬



【身寄りない高齢者守れ 首長の「成年後見」申し立て急増】

 身寄りのない認知症のお年寄りらの財産や生活を守るため、市区町村長(首長)がやむなく家庭裁判所に「成年後見」を申し立てた件数がこの5年で2・3倍に急増したことが朝日新聞の調べで分かった。認知症高齢者の孤立化が進んでいる実情が浮き彫りになった。認知症後見、自治体に差 認知症などで判断力が不十分になった人に代わり、親族や弁護士らが財産管理などを担う「成年後見制度」の申し立て状況について、朝日新聞が全国50の家裁に聞いた。2014年に家裁の判断が出た総数は計3万4205件で、前年からほぼ横ばいだった。

 このうち、市区町村長による「首長申し立て」の件数は前年より11%多い5596件だった。09年は2471件だったが、年々増え、全体に占める首長申し立ての割合は09年の9%から16%に上がった。都道府県別では東京(894件)や大阪(525件)が多く、首長申し立ての比率は山形(34%)、徳島(30%)、山梨(30%)の順に多かった。

http://www.asahi.com/articles/ASH425CR0H42ULFA01N.html

(2015年4月5日朝日新聞デジタル)