成年後見人と身元保証

 認知症などになり判断能力が衰えた方(以下、「本人」といいます。)の財産管理、身上監護をする立場の人を成年後見人といいます。

 この成年後見人は家庭裁判所から選任され、家庭裁判所の監督の下、後見事務を行います。

 私も現在、第三者後見人として、後見事務をしております。(対の言葉として「親族後見人」があります。)

 後見制度を利用しなければならなくなったけど、法律で定められた申立権者からの申立てがなされず、本人の不利益が及ぶおそれのある場合は、『市長申立』という行政が最後の砦として申立をしてくれます。

 この市長申立を利用した場合、頼れる親族がいないことが多いと思われます。

 本人の状態の変化によって、特別養護老人ホームに入所が必要になった場合、施設側は「身元保証人」を入所の条件にあげてきます。親族後見人など頼れる方がいる場合はいいのですが、「市長申立」の案件の場合は身元保証人になってくれる方を見つけるのは容易ではありません。

 身元保証とは、「施設利用費などの支払いで本人の資力が不足した場合は、その不足分を保証人が支払う」こと、「お亡くなりになった際は、保証人がご遺体を引き取る」ことなどを意味します。

 いずれも成年後見人の権限外の事務なのです。しかし市長申立による本人は頼れるのは私たち成年後見人以外にはいません。

 法律と現実の境で悩ましい問題だと思います。

 後見人の権限、義務とするのは、後見人にとって酷だし、だからといって資力の乏しい方は後見制度を利用できないとするのは、法律、制度の趣旨に反します。

 いろいろな立場の意見があるとは思いますが、成年後見人として事務に携わることでこうした問題点を肌で感じることができたことはよかったと思います。核家族化、少子高齢化がますます進む日本において、この身元保証問題は放置をすれば深刻化する一方です。1人の司法書士として、(公社)成年後見センター・ーガルサポートの会員としてしっかりと考えていかなければならない問題です。